今回は不動産業の話。
不動産ってまとまったお金が動きますよね。
そのお金に目がくらんで・・・いや不動産が純粋に好きで・・・いや本当はお金に目がくらんで、2016年に不動産業に参入しました。
「参入しました」と過去形になっているのはすでに撤退済だからです。経緯はおいおい説明します。
もともと投資対象として不動産を眺めていたのですが、国内そして海外の投資家のお金が東京からあふれ出て、ここ福岡の不動産にも流れこみ、競争が激化していました。
そこで考えたのが、仲介の立場になろうと。そうすれば投資家同士の過度な競争に巻き込まれず、業者間の競争に勝てばよいことになると。
幸い、地方にはウェブに強い不動産業者はほぼいません。ウェブに特化して、さらにエッジをきかせれば、福岡であれば新規参入でも十分戦っていけるだろうと。
まずは宅地建物取引士の資格をとる
不動産業界は資格や免許で守られています。
ただ障壁は低く、宅地建物取引士の資格をとり、宅建業免許を取得すれば、不動産業を営めます。
宅地建物取引士の資格保有者を引っ張ってくる、あるいは他の不動産業者と組むという手もあったのですが、せっかくの機会なので不動産の勉強をきちんとしようと思い、2015年の8月に宅建の勉強を開始。
内容も多岐にわたり、覚えることを書いた紙を自室の壁に大量に貼り付けてました。その成果もあり、2ヶ月後の10月の試験に無事合格。
次は宅建業免許です。
営業を始めるのに100万円消える!
免許自体は所定の事務手続きをおこなえば取得できるのですが、1つ問題がありました。
不動産業者として実際に営業を始めるには、万一顧客に損害を与えたときにそなえて、
・法務局に営業保証金1,000万円を供託する
・宅建協会(と保証協会)に入会して、保証協会に保証金分担金60万円を預ける
のどちらかを選択しなければならないのです。
パッと見、分担金60万円は楽そうですが、これには色々とからくりがあり・・・
分担金60万円以外に、宅建協会の入会金70万円、保証協会の入会金20万円、他に年会費やシステム利用料やら合計約100万円を支払わなければなりません。
しかも、この100万円は退会時には戻ってきません。
営業保証金1,000万円を準備するのが難しい人のためにこういった制度があるのですが、余計な出費が多いのが実態です。
であれば、営業保証金1,000万円(退会時には確か全額が戻ってくる)を供託しようと考えたのですが、こちらを選択すると「レインズ」にアクセスすることができないのです。
レインズは、不動産業者が物件を検索するときに使う不動産情報ネットワークです。国土交通大臣の指定を受けた指定流通機構が運営していて、仲介可能な物件情報が掲載されています。
物件情報にアクセスできない不動産業者では仲介もまともにできません。
宅建協会に入らずにレインズを使える方法はないのかと調べたものの、同じように出費がかさむ方法しか残されておらず、やむなく宅建協会に入会しました。
なんだかんだ手続きに時間がかかり、免許がとれたのは2016年5月でした。
ターゲットをどこに絞るか?
免許の手続きを進めるのと並行して、2つのサイトの立ち上げをおこなっていました。
・マンション売却Z
マンションの売却に特化した、売主向けのサイトです。査定が面倒な戸建てを避け、マンションに特化しました。
福岡市版として作っていますが、全国版に改造して、福岡市の案件は自社、福岡市以外の案件は他社あるいはアフィリに流すといったスキームも考えていました。
・居抜き物件ナビ
主に飲食店向けの居抜き物件に特化したサイトです。居抜き物件を探している人のための解説サイトとしてある程度アクセスを集めてから、物件情報サイトに改造していく予定でした。
私自身が全国の厨房機器のリサイクルショップと組んで、厨房機器の買取・販売サイトをすでにいくつか運営しており、居抜き物件に残された厨房機器を高く査定できる強みがありました。
両サイトともすでに閉鎖したので、今となっては立ち上げ初期の残骸がローカル環境に残っているだけです。
まずは友人の物件探しのお手伝い
サイトで集客できるようになるまで何もしないというのもあれなので、不動産営業の経験豊富な友達に手取り足取り教えてもらいながら、友人の物件探しの手伝いを始めました。
実際に物件探しを手伝い始めると、当然ながらいままで見えていなかったことが見えてきます。
その最たるものが、案内業務の非効率さ。
1つの物件を紹介するのに、
・事前にその物件を管理している不動産業者に出向いて鍵を借りる
・当日現地で物件を案内
・案内終了後にまた鍵を返しに不動産業者にいく
もちろん現地キーがある場合も多々ありますが、案内するための現地までの往復時間が馬鹿になりません。
そして、1つの物件をみて即決する人なんて稀で、通常はいくつもの物件をみてから決めます。
となると、その分だけ案内、つまり、物件までの往復時間+案内時間+準備時間が必要になります。物件が遠方になるとそのインパクトはいっきに増してきます。
「商圏を極力小さくしないと(売主側の仲介にうまくまわっても)キツイ・・・」
と考え始めた頃に、不動産業と同時期にリリースしたサイト売買サービス(2016年7月リリース)が伸び始め、いったん不動産業は休止して、サイト売買に集中することにしました。
サイト売買も同じ仲介業なのですが、現地案内という行為がサイト売買ではサイトURLをメールで送るだけなので、効率的です。(不動産業と比べるのもあれなのですが・・・)
会社売却とあわせて不動産業廃業
不動産業はそのまま休止したままにもできたのですが、2018年4月に当時経営していた会社を売却することになりました。
詳細はこちらの記事に書いています。
https://www.site-z.com/entry/?p=1008
宅建業免許は会社に対して付与されたものですので、他にもっていくこともできず、売却直前に不動産業は廃業することとなりました。
宅建協会に退会手続きにいくと事務のおばさんから、「早かったですね~」の一言。笑
退会するのも早かったですが、何より1件も仲介を成立させることなく退会することになり、
「営業を始める際に払った100万円はどこに?」
といった感じでした。笑
以上、失敗談でした!ご清聴ありがとうございました。あ、でも少しだけ書き足します。
まったくの無駄ではなかった
10個サービスを立ち上げて3個成功したらOKという考えでいますので、失敗しても全然かまわないのですが、挑戦したことから学べることもあります。
今回でいうと、
・個人として不動産に関する知識がある程度身についた
・サイト売買に知識をいかしている
の2つが得たことです。
2つ目のサイト売買に知識をいかせる点は重宝しています。
同じ仲介業でありながら、不動産業は歴史が長く、知識・ノウハウが蓄積されてます。かたや、サイト売買は歴史が浅く、まだ10年や20年といったところではないでしょうか。
サイト売買で何かトラブルが起きたときに、自社・業界内で前例がなければ、
「不動産業であればこの問題はどう対処するのだろう?」
と考えることで、解決策が簡単に見つかるケースもあるのです。
決して、サイト売買にいかすために不動産の勉強をしていたわけではありませんが、思わぬところで役立っています。
ウェブで不動産業を攻めるなら
最後に、「ウェブで不動産業を攻めるならどうするか」について気付いたことメモ。
・物件の仕入れが命なので、売主に照準をあわせる
・自社で扱う物件は範囲をできるだけ絞る(自社から半径●キロ以内 等) ※これ重要!テストにでます
・できれば物件のタイプも絞る(マンションだけ、居抜きだけ 等)
・とは言いつつ、ネット集客は全国がターゲットになりうるので、自社の守備範囲外の案件は他社あるいはアフィリに流す
このハイブリッド型がウェブで不動産業を攻めるのに効率的かなと今でも思っています。
全国何千社もの不動産業者のウェブまわりをサポートしている業者と雑談をしていて、このアイデアを話したところ、その業者のクライアントで1社だけハイブリッド型(自社+アフィリ)をおこなっているところがあるとか。
まだまだレアな攻め方だと思います。参考までに。でも、失敗しても責任は負いませんよ。笑